以前キャリコネニュースさんで連載させて頂いていたものです。
著作権は私のところにあるので、こちらにも掲載させて頂きます♪
元のサイト→http://careerconnection.jp/biz/hotel/content_1686.html
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ビジネスホテルには、本当に様々なお客様がいらっしゃいます。中には、少しクセがあり、「苦手だな」と感じてしまうお客様もいらっしゃいます。
そんな中、最初は苦手意識を抱いていたものの、最終的にはとても仲良くなることができたお客様の話を、今日はしたいと思います。名前はNさん。見た目は普通のビジネスマンでしたが、スタッフの間では有名な常連プチクレーマーでした。
Nさんは怒鳴り散らすわけではないのですが、宿泊する度に「チェックインがモタモタしている」「部屋が狭い」など、愚痴のようなことを言ってきます。そして、チェックアウトする時にはいつも「こんなホテルもう二度と来ない」と言い残して帰っていかれるのです。
それでもなぜか月に2~3回はいらっしゃる常連のお客様だったので、いやでも関わる頻度も高く、Nさんに苦手意識を持っているホテルスタッフは沢山いました。
正直、私も最初はNさんが本当に苦手でした。精一杯心をこめて対応しても、いつも何かしら文句をつけられる。正直、どう対応すれば良いのか分からない。失礼な話ですが、
「本当にもう二度と来なくていいのに…」
そう思っていました。しかし、ある時、私はあることに気付いたのです。
Nさんは、お仕事の出張でうちのホテルを利用していたのですが、「会社から出るのは8000円までだから」という理由で、たとえ9500円で宿泊しても、8000円分だけ領収書を出させて、残りの1500円は自腹を切っていました。
ということは、実は、Nさんはうちのホテルが好きなんじゃないか。毎回何かしら文句は言ってくるが、何だかんだでいつも利用してくれる。周りには8000円以内で泊まれるビジネスホテルも沢山あるのに…。
うちのホテルが好きだからこそ、細かいところまで気になって指摘してしまうのではないか。もしくは、少し古い言葉になりますが、いわゆる「ツンデレ」なのではないか。
そのことに気付いてからは、私はNさんが何だか大好きになりました。そしてその気持ちは、接客態度にも顕著に表れました。
Nさんがフロントに何か言いに来られた際には、どのスタッフよりも真っ先に対応しにいくようになったのです。チェックアウトの際に「もう二度と来たくない」と言われても、
「でも、私はまたお会いできる日を楽しみにしています!」
と笑顔で返せるようにもなりました。
Nさんも、そんな私の変化を読み取って下さったようで、フロントに文句を言いに来る回数が徐々に減り、その代わり「今日は仕事大変だったよー」などと雑談をしに来る回数が増えました。
そしてその何か月後かに、私が別の事業所に転勤になった際には、他のどの常連のお客様よりも寂しがってくれたのです。
私がもし「Nさんは嫌いだ」という気持ちを持ち続けていたら、Nさんとこんなに良い関係を築くことはできなかったでしょう。相手を理解しよう、歩み寄ろうとすることの大切さを、私はNさんに教えてもらいました。