以前キャリコネニュースさんで連載させて頂いていたものです。
著作権は私のところにあるので、こちらにも掲載させて頂きます♪
元のサイト→http://careerconnection.jp/biz/hotel/content_1840.html
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不特定多数のお客様を接客するホテルで働いていると、絶対に避けて通れないお仕事があります。それはクレーム対応です。以前、プチクレーマーNさんと関係を改善した話を書きましたが、そのようにうまくいくケースばかりではありません。
というのも、クレーマーの中には、どうやっても対処不能な部類のクレーマーもいるからです。私が勤務していたホテルでは、失礼ですが、そういった営業妨害レベルのクレーマーのことを「モンスター」と呼んでいました。
その日私は、21歳のアルバイトS君との2人体制で夜勤の仕事を進めていました。私は事務所で部屋割り業務を、S君はフロントでレジ締めをやっていました。夜中の零時ころになって、フロントの方が騒がしい。何だろうと思ってドアに耳をあててみると、こんな声が聞こえてきました。
「何で俺の部屋がこんな低層階なんだ!!」
「申し訳ございません。すぐに高層階のお部屋に替えさせていただきます」
「今更変えられたって、嬉しくも何ともない! バカにしてんのかッ!」
しばらくドア越しに聞き耳を立てていると、次第に状況がつかめてきました。どうやらそのモンスターは、予約なしの飛び込みでフロントにやってきたようです。
そこでS君は、空いていた3階のお部屋をご案内した。通常なら、それでチェックインは終了のはずなのですが、モンスターは「自分が3階に案内されたこと」が気に入らなかったようなのです。
さらにその後、S君が高層階への変更を提案したことに対しても、「自分がしたミスをうやむやにしようとしている」とご立腹の模様。階によって部屋の広さや設備が変わるわけでもなく、なぜそこまで腹を立てているのか正直ちょっとよく分からない状況でした。
S君は、ひたすら怒鳴られては謝り、怒鳴られては謝りを繰り返していました。大丈夫かなと心配していると、不意にモンスターが叫びました。
「お前じゃ話にならない。もっと上のヤツを呼んで来い!!」
上の人? 今は夜中で、支配人も他の社員もいない。ということは…。嫌な予感が頭をよぎる間もなく、S君が事務所に戻ってきました。
「ユズモトさん、聞いてました? お願いします。社員でしょ」
やっぱり! しかしここで私みたいな若手の、しかも女が出て行ったら逆効果なのでは。そう思いながら腹をくくってフロントに出ると、案の定、怒鳴り声が飛んできました。
「上のヤツって言ったのに、お前は何だ!」
夜勤責任者の、社員のユズモトと申します、と言っても信じてもらえず、「どうせバイトだろ!ふざけるな!」「バカにするな!」などなど――。
その後私は、モンスターが疲れて「もう相手してられない!」と部屋に去っていくまで、1時間半も怒鳴られ続けたのでした。
なお、ホテルでは夜中でも上司に連絡はできますが、自分では処理しきれないミスをしたり、倒れたお客様がいたりするなど、本当に緊急の場合以外は、寝ている上司を夜中に呼びつけることはしませんでした。
実はホテルでは「上のヤツを呼べ!」と言われることは、しょっちゅうあること。そのたびに呼んでいたのでは、支配人に叱られてしまいます(笑)。
実は入社数か月経ったころには、私はモンスターに出会ってもパニックにならず、あまりダメージを受けなくなっていました。
こちらに非がなく、明らかに相手がおかしなことを言っている場合には、ただただ「運が悪かったな」と思い、何を言われても傷つくことはなくなるのです。これが「経験を積む」ということなのかもしれませんね。
さて、夜が明けて出勤してきた支配人に一連の出来事を報告すると、支配人はニヤリと笑ってこう言いました。
「モンスター退治、お疲れ様。チェックアウトは俺がやるから心配すんな」
そんな余裕の支配人を見て、私はふと「この人は、これまで一体何人のモンスターを退治してきたのだろう…」と思ったのでした。
ピングバック
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